銘 信国(左衛門尉)





  古刀 (応永頃 約620年前)
公財)日本美術刀剣保存協会 
   保存刀剣鑑定書






長さ29.0cm 反り0.2cm 目釘穴3個
元幅2.6cm 先幅--cm 元重0.5cm
 

 信国派は南北朝時代から室町時代にかけて山城国に栄えた一派で、その祖信国は来派了戒の系統を汲みながら相州伝を取り入れ、山城伝に新たな作風をもたらした名工として知られている。その後、応永年間には源左衛門尉信国・源式部丞信国らが活躍し、いわゆる「応永信国」として一門の隆盛を築いた。なかでも左衛門尉信国は、山城物らしい品位ある地鉄に相州伝の強い沸の働きを加え、互の目を主体とする変化に富んだ乱刃を得意とした。また彫物にも巧みで、応永二十一年紀の名物「松浦信国」をはじめ、今日に優作を遺している。

 本作は平造り、三つ棟、僅かに反りを備えた端正な姿を呈する。鍛えは板目肌を主体としてところどころ流れごころとなり、地鉄に変化を見せる。刃文は互の目乱れを焼き、小沸よくつき、小足頻りに入り、砂流し盛んにかかり、金筋・葉などの働きを交えて刃中は頗る賑やかである。帽子は乱れごころに小丸に返り、先は掃き掛けて火焔風を呈する。表裏には棒樋を掻き流し、茎は栗尻、鑢目は浅い勝手下がりとなる。

 総じて本刀は、山城物らしい品位を保ちながら、互の目乱れに小足・砂流し・金筋・葉などを交えた、応永信国ならではの躍動感ある出来を示している。なかでも盛んにかかる砂流しと、火焔風となる帽子には相州伝の影響が色濃く窺われ、山城伝を基調としながら相州伝を巧みに取り入れた信国一門の作風をよく伝えている。端正な姿の中に力強い地刃の働きを秘め、応永信国の魅力を存分に味わうことのできる、誠に見どころ多き一口である。