大和守安定

  上作 良業物




新刀(寛文頃 約360年前)
公財)日本美術刀剣保存協会 
  特別保存刀剣鑑定書







長さ75.8cm  反り1.7cm 目釘穴1個
元幅3.1cm弱  先幅2.1cm 重ね0.7cm強

 『新刀弁疑』にによると「武州江戸住人、大和守安定と切る、此作ざんぐりとして錵匂深 し、湾、直刃、大亀文(みだれ刃)いろいろあり富田と切、石堂一家なり、」とあり、また別の項に「安定・紀州」と記されている。 従来越前国出身とされてきましたが、様々な情報を勘案すると紀州石堂より出て、江戸で大成したとするのが正しいようです。 元和四年に生れ、紀州石堂一派として修業を積み、後年江戸にでます。 慶安元年・二年紀の山野加右衛門尉永久の金象嵌のある同作に、「武州作之」と銘したものが現存することから、1648年頃には江戸に出ていたようです。 作風、茎の仕立、そして山野家の金象嵌載断銘などの共通点から和泉守兼重が師であると推測されていますが、古来より越前康継との関連性も指摘されています。 作風はのたれに互の目を交え、やや角ばるものと、互の目を主調とした乱れ刃との二様に大別されます。

 本作は二尺五寸を超す長尺の優品
 姿、鎬造、庵棟、棟のおろし急、身幅尋常、元先の幅差つき、鎬高く、踏張りごころがあり、反りやや深めに、中鋒つまる。 鍛え、板目に杢交じり、よく練れ、地沸微塵に厚くつき、地景細かに入る。 刃文、互の目を主調に乱れ、やや角がかった刃など交じり、足よく入り、匂深く、沸よくつき、細かに砂流しかかり、金筋入り、湯走りかかる。 帽子、浅くのたれ込み、丸くやや深く返り、 先僅かに掃きかける。 茎、生ぶ、先細って刃上がり栗尻、鑢目大筋違、目釘穴一、指表目釘穴の下棟寄りにやや大振りの五字銘がある。

 安定の現存作は江戸に移り住んだ慶安頃からのものが見られ、延宝頃へと続いていきますが、万治頃が技量の最盛期とされ、この頃は覇気ある作が多く見られます。 本作も茎仕立てや銘振りなどからして大成した万治頃の作とみられ、長尺にもかかわらず元から先まで僅かな破綻もなく、見事に造り上げており、流石は安定全盛期の作である。
 切れ味についての評価はすこぶる高く、稀代の試斬家山野加右衛門の截断銘が入った作も多く残されており、中には「天下開闢以来五ツ胴落」と記されたものもあり、新刀随一の呼び声も高い。 また、新選組最強の剣士、一番隊組長沖田総司の愛刀としても知られ、高い人気を誇っています。 
 変り塗鞘打刀拵、白鞘付き。