兼定 (之定)

  最上作 最上大業物 




古刀(約520年前)
公財)日本美術刀剣保存協会 
  特別保存刀剣鑑定書







長さ63.8cm  反り1.6cm 目釘穴1個
元幅2.9cm  先幅1.8 重ね0.7cm

 和泉守兼定(之定)は孫六兼元と並んで室町時代後期の美濃鍛冶を代表する刀工で、「定」の字のウ冠の中を「之」と切ることから「ノサダ」と称され、一般に三代といわれる「疋定(ヒキサダ)」と区別されている。 しかし、「古刀銘集録」に「同二代目和泉守藤原ト打 明応年号切 定ノ字体真ニシテ多関住作打 永正ノ初ヨリ如此之ノ字切 故ニ之定ト唱」とあり、初めは定の字を楷書で切った事がわかる。 そして、「ノサダ」銘に転化したのは永正の初めというが、現存する作刀からすれば、明応8年11月以降で同9年8月以前とするのが正しい。 兼定(之定)は古刀期にあって珍しく受領「和泉守」を許された刀工で、多くの刀剣書は「すぐれたる上手」と述べている。 。(第十四回特別重要刀剣より抜粋)

 姿、鎬造、庵棟、先反りつき、中切先。 鍛え、板目流れごころに地沸つき、やや肌立ちて、白気映りが乱れ立ち、かな色深く冴える。 刃文、互の目乱れに尖り刃を交え、丁子ごころの刃入り、金筋・砂流しよくかかり、匂口締まりごころに明るく冴える。帽子、乱れ込み、先尖りごころに掃きかけて返る。 茎、生ぶ、先浅い栗尻、鑢目鷹の羽、目釘穴一、差し表棟寄りに二字銘。

 兼定の中でも巷間にその名が広く知られ、そして最も上手なのが和泉守兼定、通称之定(のさだ)です。 その作風は丸い互の目・のたれ・互の目丁子などを交えた刃文を焼いて変化があり、鍛えがよく錬れて優れているといわれております。 また美術的な完成度のみならず斬れ味においても他の追随を許さぬものがあり、まさに名品中の名品と言えます。 
 本作もその名に恥じぬ逸品。 室町期に流行った典型的な片手打ちの体配に白気映りの上がるよく練れた地鉄(じがね)や、多様な変化をもたせつつも格調高く仕上げた志津風の焼き刃は明るく冴えわたり、流石は天下にその名が知れ渡った名工の作はこうも違うかと思わせる見事な出来栄えです。 同工の重要刀剣指定品中にも同じ長さ、同じ作風の品が散見され、まさに之定の典型と言える作ですが、本作に於いて特筆すべきは匂口が他の重要刀剣指定品と比して一際明るく冴えており、入念且つ会心の作であることが容易にみてとれる。
 江戸後期に制作された状態の良い肥後の半太刀拵が付属しています。