太刀
  無銘 保昌






古刀(鎌倉時代後期 約730年前)
公財)日本美術刀剣保存協会  
   特別保存刀剣鑑定書





長さ68.2cm 反り2.2cm 目釘穴2個
元幅2.65p 先幅1.5p 元重0.65p

 大和伝は古来より寺社勢力との関わりの中で発展した日本刀の一大潮流として知られ、その中にあって保昌派は、手掻・尻懸・千手院・当麻と並ぶ「大和五派」の一つに数えられる名門です。保昌一門は、柾目肌を基調とした鍛えの美しさと、冴え渡る地鉄、そして気品ある直刃調の作域を特色とし、殊に鎌倉期の作においては、古雅にして凛然たる大和伝の真髄を今に伝えている。その作風には実戦刀としての剛健さと、古刀期特有の格調高い美意識が兼ね備わり、古来より刀剣愛好家・研究家の間で高く評価されてきました。

 本作は、鎌倉時代における保昌派の典型的特色を顕著に示した、極めて稀有な「生ぶ茎」の太刀です。
姿、鎬造り、庵棟、やや細身にして腰反り高く、中切先となり、優美な太刀姿を今に留めている。 鍛え、柾目肌が精緻によく練れ、地沸(じにえ)厚くつき、地景盛んに入り、さらに地斑を交えて、鉄色はいかにも大和物らしく冴え渡る。 刃文、細直刃調を基調として小互の目を交え、匂やや深く、小沸よくつき、刃縁にはほつれ・打ちのけなどの働きが現れ、匂口はいよいよ明るく冴える。 帽子、直ぐに焼き詰めて先掃き掛け、古雅なる大和伝の趣を色濃く示している。 茎、生茎(うぶなかご)、鑢目勝手下がり、先刃上がり栗尻、目釘穴二。

 総じて本刀は、保昌派特有の精緻な柾目鍛えと澄明なる直刃調の美しさを余すところなく伝える優品であり、鎌倉期大和伝の気韻を今日に伝える貴重な遺作というべきです。 とりわけ、市場に流通する保昌の多くが大磨上無銘である中、鎌倉時代の保昌の太刀で「生ぶ茎」のまま現存する作例は、確認されているものだけでも数振りと極めて少なく、その伝存自体が奇跡的といえます。古雅なる姿態と健全な出来口を兼備した本刀は、歴史的・資料的価値はもとより、鑑賞刀としても格別の魅力を備えた、生涯の愛刀にふさわしい至高の一口(ひとふり)です。